民事信託を検討すべきタイミング

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2024年11月26日

1 認知症対策を行いたい場合

 相続対策では、遺言書作成が有益な方法ですが、遺言書を作成しても家族の認知症には対策をとることができません。

 家族が認知症になり、銀行口座が凍結等される際に有益な対策方法の一つは民事信託です。

 例えば、父親が認知症になった場合は、父親の収益不動産は息子が受託者となって運用を行う旨の民事信託契約を締結しておけば、父親が認知症となっても、収益不動産の管理やリノベーション等を行い、賃料を値上げする等のこともできます。

 このような対策を採っておかなければ、家族にできることは収益不動産が劣化しないような管理程度のことしかできません。

 そのため、認知症対策をご希望の場合は、民事信託を検討すべきタイミングといえます。

2 収益不動産を妻、息子、孫などの順番に引き継ぎたい場合

 遺言書では、ご自身が亡くなった後の承継先を決めておくことはできますが、更に次の承継先を決めておくことまではできません。

 このような場合には、受益者連続型信託という信託契約を締結しておくことで、例えば、最初は収益不動産の賃料は父親が得る、父親が亡くなると妻が得る、妻が亡くなると息子が得る、息子が亡くなると孫が得るといった順番を指定しておくこともできます。

 30年間という信託期間の制限はありますが、遺言ではこのような連続して承継先を決めるようなことはできませんので、遺言では実行できないことを行いたい場合も、民事信託を検討すべきタイミングといえます。

3 障害を持った子どもに財産を残したい場合

 信頼できる家族がいる場合はその家族に預ける方法もありますが、なかなか見つからないような場合は、信託会社に財産を預け、障害を持った子どもの施設費用や日常生活費に充ててもらう方法もあります。

 保険会社のなかには、自分が亡くなった際の保険金を保険会社に信託財産として預け、そこから自分の死後は子どもに保険金から費用を支払ってくれるところもありますので、このようなことを実現したい場合も、民事信託を検討すべきタイミングといえます。

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