相続税の課税対象となる財産
1 相続税の課税対象となる財産の概要
相続税は資産に対して課せられる税ですので、被相続人に属していた資産的価値がある財産は、原則的にはすべて相続税の課税対象となります。
典型的なものとしては、次のものが挙げられます。
①現金・預貯金
②不動産
③有価証券(上場株式、投資信託、国債など)
また、民法上は相続財産に含まれないものであっても、相続税法においては相続税の課税対象となるものもあるという点に注意がひつようです。
このようなものは「みなし相続財産」と呼ばれ、典型的なものとしては次のようなものが挙げられます。
④生命保険金、死亡退職金
さらに、相続開始前3年以内の贈与(令和6年以降に贈与される財産については、段階的に相続開始前7年以内に延長)により取得した財産は、相続財産の前渡しとして相続税の課税対象となります。
相続時精算課税制度を選択した場合に贈与を受けた財産(一部例外があります)も、相続税の課税対象となります。
以下、上述の①~④の財産、および例外的に相続税の課税対象とならない財産について説明します。
2 相続税の課税対象となる財産
⑴ 現金・預貯金
現金と預貯金は、被相続人がお亡くなりなられた時点(相続開始時点)の残高が課税対象となります。
葬儀費に充てるなどの目的で、生前に銀行から引き出した現金等がある場合には、その現金の金額が課税対象となります。
定期預金がある場合には注意が必要です。
相続開始時点までに発生していた既経過利息も課税対象となりますので、金融機関等で既経過利息計算書を取得する必要があります。
⑵ 不動産
被相続人が所有していた土地、建物は相続税の課税対象となります。
建物は、固定資産評価額が評価額となります。
土地は、路線価地域にあるものについては、1㎡あたりの路線価に敷地面積を掛け合わせ、土地の形状等に応じた補正を行うことで評価額を算定します。
倍率地域にある土地については、固定資産評価額と倍率表を用いて評価額を算定します。
⑶ 有価証券(上場株式、投資信託、国債など)
上場株式や投資信託、国債は、一定の評価方法に基づいて評価額を算定します。
証券会社や金融機関によっては、相続用に残高証明書を取得する際、相続税評価額を算定した書面を提供してくれることもあります。
⑷ 生命保険金、死亡退職金
生命保険金、死亡退職金は、本来的には相続財産ではありませんが、相続税申告上は相続財産に含めなければなりません。
保険会社や被相続人の勤務先から取得した資料をもとに、金額を算定します。
なお、生命保険金や死亡退職金については、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。
3 相続税の課税対象とならない財産
2とは逆に、被相続人の財産等であっても、例外的に相続の課税対象とならないものがあります。
具体的には、次のものが挙げられます。
①墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしているもの。
ただし、骨とう品など財産的価値が高いものや、被相続人の事業の商品として所有していたものは相続税の対象となります。
②宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。
③地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。
④被相続人が経営していた幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの。
非課税となるためには、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。
⑤相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの。相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの。